2009年10月 2日 (金)

企業連携のほんとうの意味

9月17日開催のセミナー『企業との連携強化で工賃倍増を実現させる方法』に参加しました。「企業連携」をキーワードに組み立てられた研修でした。

企業連携と聞いてあなたは何をイメージするでしょうか。

ちょっと、考えてみてください。

私もしみじみ感じているのですが、福祉施設が(特に工賃倍増との関連で)企業と連携することをイメージするときの「企業」とは私(あなた)が知っている企業のことになってしまう、ということです。

もしも、福祉と企業との連携をという言葉を目や耳にして「また下請けのことか」とか「企業のCSRは胡散臭いしなあ」などという思い込みがあるならば、それはあなたがまだ本当の(あるいは本物の)企業に出会っていないからです。本物に出会っていないにも関わらず、その極小で貧弱な出会いの体験をもって全体を規定してしまうのは、とても残念なことです。

残念などころか、企業との連携の道を捨て去ることによって工賃倍増が遠退くならば、この考え方は「障害者虐待」の考え方だと私は思います。

いかがでしょうか。

企業との連携を真剣に検討してこなかった自分の今までをつくづく反省しています。そして自分の知らないところで、自分が意識していなくても障害者虐待をしてしまうものなのだという怖さを感じています。

福祉業界内にいるだけでは、もしかしたら本当の企業の力、本物の企業の使命・スピリット(魂)には出会えないのかもしれません。

一歩踏み出すことが必要なのです。

少なくとも「企業との連携」を考え検討するときには、「福祉との連携」を検討・模索している企業人と出会うことが不可欠です。

企業と福祉、福祉と企業、言葉では何とでも書けますが、その中身は見る人によって大きく異なるので、まずは人との出会いを作らなければ、触発・発展・革命は起こらないだろうと思います。

このようなことを強く、思い起こさせるセミナーだったのです。

まさに福祉と企業との両方を対等に目にすることが出来るのがコンサルタントの強みであり、そのコンサルタントの貴重な視点を活用する姿勢が施設長には必要な資質だと思います。

ただし、よいレクチャーであればあるほどよい情報、貴重な情報を得た喜びに満足しがちになるという落とし穴があります。

本当のポイントはその情報や知見を得たあとの行動にあるのです。

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2009年9月15日 (火)

情熱と「桐一葉」

9月10日、私が勤務する施設の職員3名とともに船井総合研究所主催の「情熱経営フェスタ」(会場:パシフィコ横浜)に参加しました。会場には2千名を超える聴衆の情熱が巻き上がっていました。

船井総研の小山政彦社長の講演に続き、株式会社植松電機専務取締役の植松努氏、株式会社マザーハウスの山口絵理子氏が今回のゲストスピーカーで、船井総研のコンサルタント岩崎剛幸氏がまとめのスピーカーでした。それぞれに強く心に残るメッセージを発してくださいました。

おそらく岩崎氏の「情熱」発案でこの大規模イベントはスタートしてきたのでしょうが「情熱を行動に変える」というメッセージをいまいちばん強く心に響かせられるコンサルタントは岩崎氏ではないかと思います。

その岩崎氏の講座の中で「桐一葉落ちて天下の秋を知る」という言葉が紹介されました。この句は、豊臣政権の五奉行の一人の片桐且元(信長死後に対立した織田家の柴田勝家との賤ヶ岳の戦いで福島正則や加藤清正らと共に活躍し、「賤ヶ岳七本槍」の一人に数えられている)が、淀君に疎まれ解任されたときに、自らの運命を桐一葉の「桐」を片桐に掛けて、また、豊臣政権の行く末を案じての句といわれています。いまでは桐の葉の落葉は落葉樹の中でも早いほうなので、その最初の葉の落葉から秋を知るとは、些細なことから世の中の大きな趨勢を読み取る洞察の大切さに例えられています。

岩崎氏も講座の中では、この句を引用して「シンプル消費」という時代の趨勢の説明をしていました。バブル期を体験した世代の40代(私も含まれます!)と団塊ジュニア世代の30代には大きな隔たりがあり、このことを見逃すと消費者の価値観と企業の価値観が大きくずれてしまう、というのです。

福祉の世界でも、工賃倍増などに広く取り組む中、消費者の性向をどのようにつかんでいくか、は重要なポイントとなるのですが、もしも授産事業の方向性や商品開発のキーマンとなる施設長が40代以上だとすれば、自分の体験や感性をもって努力すればするほど、消費者の価値観とは離れていってしまうことになるのです。それだけにそれぞれの施設・事業所でいま提供している商品・サービスを受け取る消費者は、開発主体である自分と世代が同じなのかどうかを点検する必要があることになります。

そして、もしも自分と異なる価値観を持つ世代が消費の中心となるならば、その違いをどこからつかむのか、つまり「桐一葉」にどのようにして気づくのか、が本当に大切なことになるわけです。

このような消費者の動向をいち早くつかむ努力・実践・継続的改善は、どの企業もし続けているはずです。それでも百貨店業界などはいま実績が前年度比1割以上も落ち込んでいるのが実態です。

大切なことは、福祉業界だからといって、この努力・実践・継続的改善は免責されないということです。施設長が取り組まなければならないのです。自分一人だけでの情報収集・勉強では限界がありますから、効果的な情報収集(そして、一過性の情報収集にとどまるのではなく、継続的な効果をもたらす「人脈づくり」という要素を常に念頭に置きながら)の場に身を置くことが、施設長の資格なのです。

この「情熱経営フェスタ」のゲストスピーカーの植松努氏、山口絵理子氏はそれぞれ社員20名の会社で本業の他に宇宙開発に取り組む実践、アジア最貧国バングラデッシュから「途上国から世界に通用するブランドをつくる」実践を話され、私の勤務する施設職員はその熱いスピーチにいたく感動していました。

岩崎氏は、おそらく「このゲストの二人が「桐一葉」です。この二人の実践からあなたはどのような世の中の大きな趨勢を読み取れますか?」と私たちの洞察力を試しているのだ、と感じました。

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2009年3月 8日 (日)

弱みと強みは同じ

先週は全国社会就労センター長研修会が浜松市で開催されました。その分科会のグループディスカッションでたまたま隣り合わせた方との会話で気づいたことです。

強みと弱みは同じ。

グループディスカッションの終わりで各グループからの発表を聞いていましたところ、自施設の強み弱みを発言されていた内容が、私の感じる強み弱みとは異なっていたのです。

よくあるのは(別に施設運営に限ることではなく、商品販売などにも応用できることなのですが……)「このような不具合がある」「このようなマイナス条件がある」という弱みの発言ですが、おそらく謙遜して発言されていることがあるのでしょうが、その内容は決してマイナスの弱みではない、と感じることです。

今回気づいたのは、実はこのことではなくてその正反対なのです。つまり「これが自施設の強みだ」「自施設にとっての追い風だ」という発言内容が、それを強みだと感じることは危険ではないか……というものでした。

強みと弱みはそのとらえ方、感じ方次第でなんとでも評価できるものなのですが、自分にとって強みだと思い込んでいることが実はマイナス条件だとしたらどうなるでしょうか。

先日出版した『施設長の資格!』の中でも書いていることですが、たとえば「障害者自立支援法をどのように活用できるか」と考えることが大切で、「障害者自立支援法を救世主ととらえられる施設だけに法は明るい日差しを降り注ぐのです」。

本の中では、自分にとってのマイナス条件、マイナス環境にフォーカスするのではなく、自分を取り巻く環境をどのように活用できるか考えましょう、と提案しました。

このことだけでは、不十分だったことに気づいたのです。

自分にとって好条件と感じていることに「落とし穴」が潜んでいる、自分にとってプラス条件、プラス環境のなかに「改善点」を見つける努力を惜しんではならないと強く自戒しました。

自分一人で考え続けることは大切ですが、多くの人の考えに学ぶこともまた大切であり、そのためには費用と時間をかけて研修会へ出かけることが重要だと感じられた時間でした。

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2008年4月12日 (土)

自分がどの点で最高の力が発揮できるか

新年度が始まりました。

私が勤務する施設でも最初の職員会議(今年度からこの会議のネーミングが「パワーアップミーティング」となりました)が開かれ、席上、今年度の経営方針について発表しました。

http://www.meiroh.com/ceo/2008_keiei.html

このパワーアップミーティングの議長を務めた職員が、私の経営方針発表後に、ミーティングに出席している職員に次のように語りかけました。

「自分はどの点で最高の力を発揮できるか、を言ってください」「この経営方針を受けて、この中の項目から、今年は何をどう実践したいのか、言ってください」

プラス発想を引き出す素晴らしい会議の進め方です。そのあとに続く職員の発言も、この議長のスピリットを受けて、自然に良い発言となりました。

……「良い発言」って何? とお考えのあなたに……

笑顔で発言している言葉は、それだけで良い発言です。

改めて自分の周囲を見回してみてください。良い発言はいつも笑顔とともにあります。

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2006年12月26日 (火)

理由があるはず

先日、国立歴史民俗博物館に短時間ですが立ち寄る機会がありました。

入館券発売所で、第三展示室が改装工事中で「江戸時代」が見学できません、という案内を受けました。

とはいえ、久しぶりの見学なので新発見がいろいろとあり感激しました。

見学後、再び入館券発売所のカウンターで、改装工事はいつ終わるのですか、と尋ねました。すると2008年3月までという回答でした。

え? と思いました。いまは2006年12月です。あと1年以上かかるの? 

その理由は何だろう? と思いました。カウンターの方はそこまで説明してくれません。しかしそこをなんとかしてほしいと思いました。

あくまで想像ですか、たとえば第3展示室の中には約20のコーナーがある、その一つ一つを改装するには、特別の専門業者が関わるので1つにつき1ヵ月くらいはかかる、だから全体の改装には2年近くかかる……とか、予算的なこととか……いろいろ「理由」があるでしょう? その理由を知りたいと思ったのです。

ただ2008年3月と言われたってね。丁寧な応対とは感じられませんでした。

同じことは国立歴史民俗博物館に限らず随所に見られます。

「しばらくお待ちください」とか掲示してあればそれで事が済むと思うのは少し、配慮に欠けると言わざるを得ないと思います。

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2006年12月16日 (土)

自分で作る

12月14~15日に障害者自立支援法に基づく新事業への移行を検討する実践研修会に参加しました。

私の勤務する施設は10月から移行した(つまり全国で最初です)のでこの研修会で30分ほど報告する機会をいただきました。

移行した事業のメインは就労移行ですから、障害者の就職という実績が上がらなければなりません。「企業が雇用する」という事実が積み上がらないことには新事業の成功とはいえないのです。

で、一体どこにそういう企業があるのだろう、という漠然とした思いを抱き続けていましたが、はっきりしていることは、ハローワークや障害者職業センターからの情報を「待っている」だけでは不十分で、自力で開拓しなければならないということです。

地元の商工会議所を会場に毎月、マーケティングのセミナーを始めることにしました。ここで地元の企業の方々と真剣に集客や販売のことを語り合える人脈を一から作り始めることにしました。「ないものは待たずに自分で作る」姿勢が大切なのではないかと考えました。

企業にアプローチすることが大切ですが、こちらに耳を傾けてくださる企業をまず目の前においでいただくにはどうするか、という行動をまず第一歩踏み出さなければならないのです。

このような思いを報告の中の一部でいたしました。

研修会終了後、すぐに5名の方が私が用意したイベントを通じての集客スキルの資料を求めに声をかけてくださいました。

すぐに行動する方は5%しかいないのですが、まさにこのときもそのことが証明されたのです。

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2006年5月25日 (木)

大きくする

 障害者自立支援法が施行され、第1回目の利用料金の請求事務が終わりました。そろそろ10月以降に始まる新事業への移行についての結論を出さなくてはなりません。

 施設長としてこの障害者自立支援法を「最高の追い風」ととらえなければなりません。いまこそ法人の規模、施設のサービス提供体制の拡大をはかりたいと考えます。いわゆる「入所施設」は拡大できません。地域移行の名のもとグループホーム等への分散移行が国の施策として進められているからです。

 この「分散移行」という表現、とってもよろしいと感じませんか。地域移行といっても受け皿整備を保証することなく強引に進める施策の姿は、まさに施設つぶしに他ならないのですが、「施設つぶし」と表現するとなんだか事業者がだだをこねているような気がするのです。グループホームが地域生活の体現だと考えている方への皮肉を込めて「施設からの移行」を「分散」と呼びたいと考えます。

 さてこの分散施策によって、宿泊サービスと、昼間のサービスの分離も行われますので、施設サービスの拡大は、昼間サービスの拡大を意味します。昼間のサービスをいかに拡大するか、そしてその拡大目標をどこにおくか。

 障害者施設の「地域一番店」を考えてみたことがありますか。シェアの目標値から自施設のサービス規模(定員)考えたことがありますか。地域一番店になるための目標シェアを19.3%→26.1%→41.7%と段階的に設定していき、施設経営の安定化を図りたいと考えます。

 障害者自立支援法は「事業者規模を拡大する」「大きくする」という視点でみれば大いなる追い風です。

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2006年4月25日 (火)

人間愛なんだって

 クロネコヤマトを創業した小倉昌男(故人)の発想は「人間愛」だという。「宅急便」という郵便小包を超える宅配サービスを実現したのは「人間愛」のエネルギーなのだ。自分のため、会社のためを超えて「人間のため、人間の生活のため」という発想があってこそ権力と戦い、規制緩和をもぎとってこられたのだ。
 自分の仕事を振り返って「人間愛」に満ちあふれているかどうかを点検するとあやしい。「お客様のため」と口にはしても「人間全体の幸福のため」という発想まで届いているかといえば、全く心許ない。
 「人間愛」の発想をこそ小倉昌男の生き様から学びたい。

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