2006年8月19日 (土)

教訓はいかされず……

 8月8日に、羽田の整備場にあるJAL安全啓発センターを見学しました。85年8月12日に発生した御巣鷹墜落事故に関する展示がされています。実際に行って見てみて驚きを感じたことは、原因とされている圧力隔壁の修理ミス箇所のリベットの穴がきれいに揃っていることでした。ここから金属疲労による裂けめができて、機内の空気が吹き出して尾翼を吹き飛ばしたなら、一番ひどくなっているであろう修理ミス箇所がはっきり見えました。やはり原因は追及しきれてはいないのではないかと感じました。

 展示品ですからさわってはいけないのですが、そおっとさわるとアルミ製の柔らかな金属の感触がありました。

 そして操縦不能に陥れた油圧システムのチューブが4本、これまた圧力隔壁の一ヵ所にまとまって通っていることが見て取れました。この設計によって一気にすべての油圧が失われてしまったのかと、呆然としてしまいます。

 バックアップ機能をもたせ、システムの一部に損傷があったときでも、その被害が全体に及ばないような設計思想であったにもかかわらず、その効果がなかったのが御巣鷹墜落事故から得なければならない教訓の一つです。継続的に改善することを止めたところに悪魔は忍び寄るといえます。

 

 今年8月14日午前7時半過ぎ、東京、神奈川、千葉の約139万世帯におよぶ広範囲な停電がおきました。原因は千葉県浦安市付近の旧江戸川にかかる送電線にクレーン船が接触し、27万ボルトの2系統の送電線を同時に両方とも損傷したとのことでです。東電は一ヵ所の切断だけならば停電は起こらなかったと説明していますが、クレーンが接触して同時に切断できるような状態を、いったい「2系統」と呼ぶのでしょうか。

 空中送電システムの脆弱性(もろさ)を露呈した事故でした。また何らかの悪意をもって混乱させようと思えば不可能ではないこともまた明らかになった事故でした。

 システムを守ることは「いのちを守る」ことです。85年にシステムバックアップが不充分で一瞬にして520名の尊い命が失われた事故の教訓は、この停電事故にはいかされてはいませんでした。

 いまあらたに我が身を振り返ってみて、自分は「命を守るため」に自分の生活のどの部分に事故の教訓をいかしているのだろうかと考えてさせられました。

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2006年2月23日 (木)

体験しないと分からないこと

 私の勤務する施設の職員研修旅行が先月ありまして、GUAMに行ってきました。そこでセスナの体験操縦に挑戦しました。マイクロソフト社のフライトシミュレーターを多少かじったことがあるので、計器類の見方とかは分かりましたが、なんといっても生まれて初めての操縦です。セスナなどの小型飛行機に乗るのも初めてのことです。

 ペダルを使ってのタキシング(地上走行)がまず、なかなか思うようにできませんでした。まっすぐ走らせること、これがなかなか難しい。それからパソコンを使ってのシミュレーターでは「トリム」の感覚が分からなかったのですが、実機でトリムを入れると操縦桿が急に軽くなってトリムの意味がよく分かりました。トリムを使えば上昇下降が楽にできる。実際に操縦してみないとこの感覚は分からないことでした。

 低速飛行やストールの練習もさせてもらえたのですが、ストールは正に「絶叫マシン」ですね。パソコンのシミュレーターでは分からない激しい動きは本当に実機ならのものでした。機の姿勢の回復はたぶんに隣のインストラクターさんがしてくれました。自分で操縦桿を引いた記憶がないからです。

 3000フィート以上なら地上から吹き上げる風の影響があまりないのに、2000フィートより降下すると風の影響が強くなるとか……こういうこともパソコンでは感じられないことです。

 そういえば、以前レーシングカートに乗っていたときも、ゲームセンターにあるレースのゲーム機とはまったく違って横Gに耐える体力がとても重要だと感じたことを思い出しました。車のレースはハンドルさばきなんかじゃなくて、体を支える腹筋とかの筋力がレースの最初から最後までもつかどうかが大切なんです。腹筋がないと「息を止めたまま」力を入れ続けることになり、真夏は特に息を止めながら走っていると体内の酸素が少なくなって脳の動きが鈍くなり、車のコントロールが結局雑になる。F1のドライバーが2時間近くも走り続けるなんで化け物だなあ、とわずか10分くらいのカートレースでばてていた私はため息をつきながら思ったものでした。

 セスナの操縦も、風の影響を受けながら機の姿勢を整えることに夢中になっていていつの間にか耳が痛くなっている、などという感覚は本当に体験してみなければ分からないことでした。

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