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2009年9月15日 (火)

情熱と「桐一葉」

9月10日、私が勤務する施設の職員3名とともに船井総合研究所主催の「情熱経営フェスタ」(会場:パシフィコ横浜)に参加しました。会場には2千名を超える聴衆の情熱が巻き上がっていました。

船井総研の小山政彦社長の講演に続き、株式会社植松電機専務取締役の植松努氏、株式会社マザーハウスの山口絵理子氏が今回のゲストスピーカーで、船井総研のコンサルタント岩崎剛幸氏がまとめのスピーカーでした。それぞれに強く心に残るメッセージを発してくださいました。

おそらく岩崎氏の「情熱」発案でこの大規模イベントはスタートしてきたのでしょうが「情熱を行動に変える」というメッセージをいまいちばん強く心に響かせられるコンサルタントは岩崎氏ではないかと思います。

その岩崎氏の講座の中で「桐一葉落ちて天下の秋を知る」という言葉が紹介されました。この句は、豊臣政権の五奉行の一人の片桐且元(信長死後に対立した織田家の柴田勝家との賤ヶ岳の戦いで福島正則や加藤清正らと共に活躍し、「賤ヶ岳七本槍」の一人に数えられている)が、淀君に疎まれ解任されたときに、自らの運命を桐一葉の「桐」を片桐に掛けて、また、豊臣政権の行く末を案じての句といわれています。いまでは桐の葉の落葉は落葉樹の中でも早いほうなので、その最初の葉の落葉から秋を知るとは、些細なことから世の中の大きな趨勢を読み取る洞察の大切さに例えられています。

岩崎氏も講座の中では、この句を引用して「シンプル消費」という時代の趨勢の説明をしていました。バブル期を体験した世代の40代(私も含まれます!)と団塊ジュニア世代の30代には大きな隔たりがあり、このことを見逃すと消費者の価値観と企業の価値観が大きくずれてしまう、というのです。

福祉の世界でも、工賃倍増などに広く取り組む中、消費者の性向をどのようにつかんでいくか、は重要なポイントとなるのですが、もしも授産事業の方向性や商品開発のキーマンとなる施設長が40代以上だとすれば、自分の体験や感性をもって努力すればするほど、消費者の価値観とは離れていってしまうことになるのです。それだけにそれぞれの施設・事業所でいま提供している商品・サービスを受け取る消費者は、開発主体である自分と世代が同じなのかどうかを点検する必要があることになります。

そして、もしも自分と異なる価値観を持つ世代が消費の中心となるならば、その違いをどこからつかむのか、つまり「桐一葉」にどのようにして気づくのか、が本当に大切なことになるわけです。

このような消費者の動向をいち早くつかむ努力・実践・継続的改善は、どの企業もし続けているはずです。それでも百貨店業界などはいま実績が前年度比1割以上も落ち込んでいるのが実態です。

大切なことは、福祉業界だからといって、この努力・実践・継続的改善は免責されないということです。施設長が取り組まなければならないのです。自分一人だけでの情報収集・勉強では限界がありますから、効果的な情報収集(そして、一過性の情報収集にとどまるのではなく、継続的な効果をもたらす「人脈づくり」という要素を常に念頭に置きながら)の場に身を置くことが、施設長の資格なのです。

この「情熱経営フェスタ」のゲストスピーカーの植松努氏、山口絵理子氏はそれぞれ社員20名の会社で本業の他に宇宙開発に取り組む実践、アジア最貧国バングラデッシュから「途上国から世界に通用するブランドをつくる」実践を話され、私の勤務する施設職員はその熱いスピーチにいたく感動していました。

岩崎氏は、おそらく「このゲストの二人が「桐一葉」です。この二人の実践からあなたはどのような世の中の大きな趨勢を読み取れますか?」と私たちの洞察力を試しているのだ、と感じました。

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