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2007年1月18日 (木)

工賃倍増計画支援事業

平成19年度予算案の中に「工賃倍増計画支援事業(5億円)」(福祉施設で働く障害者の工賃を平成23年度末までに現在の水準から倍増させることを目標とする「工賃倍増計画」を各都道府県が策定し、同計画に基づく事業に対し補助を実施(事業費:1都道府県あたり1,000万円~3,000万円))の内容が盛り込まれました。

工賃水準の引き上げのための事業として18年度は、授産施設等における工賃実績の報告・公表、利用者負担における工賃控除の「見直し」、工賃ステップアップ事業(経営改善モデル事業)の実施がありました。工賃控除の「見直し」は障害者自立支援法にもとづく新制度のほころびを繕うという意味も含まれています。

「工賃倍増計画支援事業」とは、工賃の月額平均15,000円を30,000円に倍増させる支援事業です。何ができるかを考えていくことは楽しみです。

実は「できない」理由を考えることほど不毛なことはないのです。もちろん職務上、そのことの分析をしなければならないときはあります。しかし事業費が1千万円でどれほどのことができるか。研修会を開くとしても資料代・会場代・通信費で半分、講師料・調査費・報告書作成費で残り半分。都道府県内全域に2~3回程度の開催か、あるいはモデル事業の継続か、その程度のこと「しかできない」……

(できない理由を発言する人の「マイナス精神」は伝播します。だから私は極力、できない理由を見つける人や不満を口にする人から遠ざかるようにしています)

ここは一転して、5億円の予算がついた。この事業で目標を達成するためには何ができるかを考えていきましょう。


さて、工賃の月額平均15,000円を30,000円に倍増させる支援事業に注目しましょうと書きましたが、この事業の目標を正しく読み替える必要があります。

平均工賃を上げるためには、あなたの事業所で何をすればよいのでしょうか。


もちろんそれぞれの事業所の工賃が倍増すれば結果として平均工賃が倍増するでしょう。しかしここはもう少し正確に目標を設定する必要があります。

工賃は障害者お一人お一人が受け取る金額ですが、その工賃をアップするため、と考えると、障害者の能力アップがその前提として不可欠だという壁に当たります。そして「支援をしている目の前の障害者の姿を厚労省の役人に見てもらいたい、このような状態で工賃アップできるはずがない」とか「行政が施設に積極的に仕事を発注しないのだから仕事が増えるはずがない」という隘路に迷い込んでしまいます。

工賃アップの正しい表現は「工賃支払い能力アップ」です。目の前にいる障害者の働く能力が上がらなくても、変わらなくても、高い工賃を支払うことができる能力を事業所が手にするにはどうすればよいか、ということです。

実際、事業所の職員さんのお給料算定の際に「働く能力」あがらないから昇級延伸とかいう事態はないはずです(もっとも今は別の理由で賃金一律カットや賞与なしの事態が各地で生じていますが)。

工賃アップができない理由に「障害者側」の事情をもってくるのはフェアではありません。あなたが一人の労働者であるとして考えてみてください。障害者自立支援法による日割り制とか報酬単価引き下げによって事業所財政が悪化したり(外部事情)、経営者の放漫な姿勢やサービスレベル低下による顧客離れによって事業所財政が悪化(内部事情)
したりしたのに、労働者の能力が上がらないから給料が支払えないといわれたら、どのような気持ちになるでしょうか。

事業所の工賃支払い能力を形成する要素のひとつに「労働者の資質」があるのは否定できませんが、それだけではないはずです。だから、事業所の支払い能力を上げることが大切なことです。

そしてその観点から「目標」を設定する必要があります。事業所の「何」を「どう」するのかが「目標」です。

事業者の現状の何をどのように変えるか、このことが目標です。



事業の目標売上をいくらに設定するか、これが「工賃アップ」のための正しい目標設定方法です。

工賃を収入から経費を差し引いた収益を充てると考えたとしても、工賃を事前に経費化して事業計画を立てるとしても、売上が上がらないことには「結果として」工賃が上がらないからです。

事業所とともに都道府県も考えていただきたいことです。

仮に都道府県に事業所が100ヶ所あったとします。その1事業所あたりの年間売上が250万円だったとします。すると年間2億5千万円です。5年間で5億円にするというのが、この支援事業の目標です。5年間の伸びは一定ではありません。季節変動があるからではありません。事業の伸びには勢いが関係するからです。

飛行機が飛び立つためには離陸のときに一番エネルギーを使います。しかし一度飛び立ってしまえば離陸ほどのエネルギーは必要ないのです。だから、1年目が一番エネルギーを使います。1年目は1千万の伸びでもOKです。1事業所あたり10万円です。250万円売っている事業所が260万円にすることは簡単です。10万円伸ばせた事業所は同じエネルギーで30万円、50万円、80万円と伸ばしていくことができます。

500万円にするという目標があるから260万円という一里塚へ達するのは簡単なのです。しかしその簡単なことでも250万円が限界だと考えている事業所にとっては無理なことになってしまうのです。

さて、この目標を設定したならば、そのために事業所は何をすればよいのでしょうか。達成するために必要なことだけを考えます。

できない理由を考えてならないのです。

工賃倍増は、「そんなこと簡単にできる」と取り組んだ事業所だけが達成できます。支援事業の目標金額を簡単に達成できると取り組んだ都道府県だけが達成できます。

この取り組みは、障害者支援という福祉サービス提供とその質の向上への日々の取り組みとは別物です。

障害者支援の困難な現実によって授産事業の目標を見つけられないまま走り続けている事業者に対する都道府県の支援は、従来のタイプとはまったく別の支援スタイルになるのです。

そのスタイルとは……

1.工賃倍増とは、障害者支援とくに生活支援とは別次元に展開されるべきもの。または生活支援を含めた障害者支援とは別のスキルによって達成できるものであること。

2.具体的な目標は事業の売上金額等、具体的に測定できる指標により設定すべきであること。(指標に平均工賃や工賃を用いると障害者の資質に目がいくので、できるだけ売上を用いること)

3.5カ年の年次計画においては、とくに1年次目の目標を達成するのが一番困難なので、機械的に均等割することなく慎重に目標を設定すること。

4.目標を達成するために必要なことを明確にして取り組むことを奨励し、目標を達成できない理由や目標未達理由の分析にとらわれすぎないこと。

5.都道府県内すべての事業所を包括することを追求しすぎることなく、取り組みたい事業所だけで始めて、あとからの合流を自由に認めること。

6.これらのことを県内各事業所に確実に伝える方策をとること。


このことを実現するためは……

1.事業所の管理者向けに「目標設定」のための講座を実施する。

2.成功事例を評価し合う会合を実施する。この会合には管理者のほかに、職員、利用者(障害者本人)、利用者ご家族が参加する。

3.成功事例の評価の際には、障害者本人、障害者のご家族、職員同士が評価し、事業所職員・施設職員が評価され、表彰されるしくみをとりいれること。

あなたはどのようにお考えになりますか。


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